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カテゴリー ちょこっと会計講座

資本と利益の峻別

 前回(貸借対照表と利益計算書の連動)の続きですV(^-^)

 純資産の部にはいろいろな項目があるのですが、とりあえず代表的なものとして以下のものがあります。

  • 1、資本金
  • 2、資本準備金・・・a
  • 3、その他資本剰余金・・・b
  • 4、利益準備金・・・c
  • 5、その他利益剰余金(代表的なものは繰越利益剰余金)・・・d

 1~3が資本系の純資産で、4、5は利益系の純資産です。

 もう一度1期目を終えたばかりの小林自動車の貸借対照表を見てください。

貸借対照表

 小林自動車には「資本金」以外には「資本準備金」のaと「利益剰余金」のdがあることがわかります(貸借対照表では簡略化してdを利益剰余金と記載していますが、会計的にはその他利益剰余金の中の繰越利益剰余金のことです。ややこしいネーミングなので以下も同様に「利益剰余金」と略します)


 以前はこの資本系(aとb)は資本に組み入れる事ができましたが、利益系(cとd)は資本に組み入れる事ができませんでした。

 しかし今年の4月1日に会社計算規則が改正されて利益系(cとd)も資本に組み入れる事ができるようになったんですね。

 小林自動車の貸借対照表で見ると、資本系の「資本準備金」(a)だけを「資本金」に組み入れたとしても、「資本金」は1000万円にまでしかできません(「資本金」700万円に資本準備金300万円を足しこむ)

 この「資本準備金」の資本組入れをすると貸借対照表はこのように変化します。

〇資本準備金のみを資本に組み入れた場合のB/S

貸借対照表


 「資本準備金」がなくなりその分、「資本金」が増えましたね。でも「利益剰余金」は相変わらずB/Sに残ったままです。

 しかし「資本金」をもっと増やしたかったら「利益剰余金」(d)も資本に組み入れたらいいんです。

 そうするとB/Sはこうなりますε=ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

〇資本準備金のみならず利益剰余金も資本に組み入れた場合のB/S

貸借対照表


純資産の項目がスッキリしましたね(*^ 0 ^A

 「資本準備金」、利益剰余金ともに消えてその分「資本金」の額が大きくなりました。

 当然「資本金」の額がかわったので「資本金」の増加の登記を申請する必要があります。

 このように剰余金や準備金の資本組み入れというのは具体的に会社に対して現金等の振込みがなくても「資本金」をアップさせ、会社の信用を増大させることができます。

 これが募集株式の発行による資本金の増加だと具体的にキャッシュや現物が会社に入ってこないと「資本金」をアップさせる事ができないことと比較してください。資本の組み入れはあくまで帳簿上の数字の操作にすぎないんです。

 とはいっても「資本準備金」「利益剰余金」も具体的な会社の純然たる財産としての裏づけはあります。「資本準備金」は会社を設立するときに300万円に相当する出資があったのですが、あえて「資本金」からはずしていただけですし、小林自動車は1年間で具体的に700万円の利益を上げて財産を700万円増加しているから「利益剰余金」が発生したわけです。

 ですから募集株式の発行のように外部からの入金に伴い「資本金」を増加させるわけではないですが、剰余金や準備金の組み入れもやはり「資本金」を増加させるだけの資金的、財産的な裏づけがあるという事になります。

 むしろ「資本金」の項目が会社の具体的な純財産の額と乖離していたので、剰余金や準備金の資本組入れ制度は実際の会社にある具体的な財産と「資本金」の額を一致させる方向に向かわせる行為ともいえます。

 話は戻りますが、なぜ昔は資本系(aやb)しか資本に組み入れることが出来なかったかのでしょうか。

 これは会計の世界には「資本」「利益」は峻別させることを理想としなければならないという根本原則があったからです。

 「資本」というのはあくまで出資です。

 会社の儲けに関わらず、出資する人が多ければいくらでも大きくなる可能性を秘めています。これに対して「利益」はまさに会社に儲けがないとどれだけ出資額が多くても大きくならないです。

 で、投資家としては企業の決算書を見るときにこの2つは明確に分けて公表してほしいんですよね。なぜならその会社の純資産として仮に1億円がB/Sに計上されていたとしても資本系(資本金、a、b)と利益系(c、d)が分けて記載されてないと、どのような理由でその会社は1億円の純資産を作り出したのかわからないからです。

 単なる金持ち出資者が金にものをいわせて思いっきり新株発行等の増資をしまくったから1億円もあるのか、それとも資本金1円で会社を立ち上げたけど、経営者に天性のビジネスセンスがあって純資産を1億円までもっていったのか。

 こういったことは「資本」「利益」が峻別してないB/Sではわかりません。

 もし「資本」と「利益」が峻別されていれば先ほどの金持ち出資者の例だと純資産の部に利益系(cやd)は全く計上されていないのに対して資本系(資本金、a、b)は思いっきり計上されているはずです。逆に後者の天才経営者の例だと(利益系(cやd)が9999万9999円計上されているのに対して資本金は1円しか計上されていないはずです。)

 皆さんだったらどちらの会社に投資しますか!?

 私にもし投資するお金があれば絶対後者の経営者に投資します
[壁]`∀´)Ψウヒョヒョ

 なぜなら、今後も投資したお金を増やしてくれる可能性があるからです。いくら最初の出資額がでかくてもその後全く利益を上げない会社でしたら他に投資した方がましですから(あくまで利潤の追及だけを前提にした場合の話ですが)

 にも関わらず、「利益」を安易に「資本」に組み入れることが出来ると、B/Sの純資産の項目には資本金だけしか載っていないので、その会社がどういう過程を経てここまで純資産を大きくしていったのかわからなくなってしまうんですよね。

 だから「利益系」は資本に組み入れる事ができないという従前の制度は会計的にはそれなりの合理性があったんです。

 しかし今回の改正で「利益」が資本に組み入れる事ができるようになったので個人的にはかなりびっくりしました。会計ルールの理想論はいったいどないしたんじゃいと(゜▽゜;)

 結局、細やかな情報を一般に公開すべきという要請より、会社が資本金を増大させて信用をアップさせていきたいという利益の方を優先させたという事でしょうね。

 沿革まで書いてるとかなり長くなっちゃいましたが(; ̄Д ̄)このように現在は利益準備金や利益剰余金などの利益系も「資本金」に組み入れる事ができるようになったので、択一、書式を説く際には注意してくださいですv(≧∇≦)v

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