前回(合併の登録免許税)の続きです。
吸収されるA会社のB/Sを再度載せておきますね。
〇合併されるA会社のB/S
A会社を合併することにより、小林自動車は5000万円増資するとすれば、
3000万円の部分は1000分の1.5の税率なので、4万5,000円。
2000万円の部分は1000分の7の税率なので14万円にもなります。
A会社には純資産が(現預金のみ)3000万円しかないわけです。
にもかかわらず、5000万円増資するという事は5000万円で小林自動車はA会社を買い取ってることになりますがこんなことあるんかいな?という疑問が生じます。
しかしそれは充分考えられます。
なぜなら会社の価値というのは具体的な会社内にある財産の額だけでは測れないからです。
たとえば不二家にはぺこちゃんという人形があります(・∀・)
この人形自体に価値があるわけではないので貸借対照表には資産として計上されているわけではないと思います。
しかしぺこちゃんを見るとあいきょうのある顔なので頭をぺんぺんしたくなります(*゚∀゚)つ
その時点で知ってか知らずかお店の近くまで無意識に手繰り寄せられているわけです。。
これはぺこちゃんの持つ見えないブランド価値(無形の資産)といえるべきものです。
だからA会社も実際には3000万円しか資産がなくても、その会社が人気があり、もっと高く買い取ってもいいと吸収する会社が考えれば5000万円とかで買い取られることもあるわけです。
またそれ以外にも単に消滅会社の資本金と純資産の額に齟齬が生じている場合も同様のことが言えます。
例えば小林自動車が準備金や剰余金を資本に組み入れる前のB/Sをもう一度見てください。
〇平成21年12月31日末時点の株式会社小林自動車の貸借対照表(B/S)
今回小林自動車は吸収する側の会社として話を進めていってますが、もし仮に小林自動車が吸収される側の会社(被合併会社)になるとした場合で考えてみます。
小林自動車は資本金が700万円として登記されています。
しかし実際の純然たる資産は1700万円もあるわけです(資産の1800万円から負債の100万円を引く)
で、その1000万円もの差額は資本金と違う純資産として、資本準備金(300万円)や利益剰余金(700万円)として計上されているわけです。
こういう会社を合併する場合、先ほどのぺこちゃんの例のようにB/Sからは見えないブランド力、人気を度外視したとしても吸収する会社は1700万円のキャッシュを用意する必要があり、それを消滅する会社の株主に交付する必要があるわけです
このような様々な事情がからみあい、消滅会社の資本金として登記されていた金額と今回の合併に伴い存続会社がアップする資本金の額に齟齬生じる可能性があるわけです。
しかしこの齟齬が生じた差額の1000万円(消滅会社である小林自動車の資本金を超える部分)って小林自動車は登録免許税払ってなかったわけですよね。
小林自動車の資本金として登記されている700万円の部分は登録免許税を既に小林会社が払っているので存続会社は1000分の1.5だけ払えばいい。
しかし小林自動車が負担してなかった資本金700万円の額を超える1000万円の部分に関しては新たな払込みしてもらう募集株式の発行と同様の新規の信用構築手続きだから原則どおりその利益を受ける対価として1000分の7を払う必要があるという事になります。
実はこの考え方は会社分割でも同じです。
合併と分割の違いは前者が消滅する会社の純資産を全て存続会社が承継するのに対して、後者が分割会社の純資産の一部のみを承継会社に承継させているという点です。
理論は同じなので一部の消滅として分割会社の資本金が減額する部分だけは登録免許税が1000分の1.5でいいわけです。
(ただし実際は分割と減資は別の手続きでするものとされているため、分割において分割会社の資本金が減少することはなく1000分の1.5の税率が適用されることは現段階ではありません。だから吸収分割、新設分割は常にアップした資本金の1000分の7と覚えればOKです)
これに対して株式交換、株式移転。
これは1000分の1.5という概念がでてきません。なぜなら、合併や分割のように子会社の純資産を親会社が引き継ぐわけではないからです。
単なる株式の交換という株主構成をかえるだけの問題です。
そのため株式交換子会社はその後も存続し続けます。
そしてその子会社が例えば資本金1000万円として登記されていた場合、その資本金はそのまま子会社の信用として残るわけです。子会社はその後も子会社の立場としてビジネスをつづけていきます。株式交換により株主に変更が生じているだけです。
このように子会社の資本金という名の信用はそのまま維持されて、その信用を構築するために支払った対価(資本金の登録免許税1000分の7)は無駄には終わりません。
株式交換により親会社が増資したとしてもそれは親会社独自の信用を構築するための増資であり登録免許税の二重払いという問題は生じません。
そのため株式交換や株式移転は合併や分割と異なり独自の登録免許税区分が設けられていません。
つまり株式交換の場合は募集株式の発行になぞらえて1000分の7。株式移転の場合は通常の会社設立登記になぞらえて1000分の7。ただし最低15万円という原則論に戻るわけです。
以上で「ちょこっと会計講座」は終わります(^^*)
この会計の仕組みはほんのさわりの話ですが、知ってる知ってないで会社法の知識の理解度が大分ちがってきます。一回で分からなかった方は最初から2回、3回と読んでぜひ会計の大枠だけでもつかんで会社法を得意分野にしちゃってくださいね!!